あるクライアントの月次入力が、なかなか進みませんでした。
その会社は、銀行やカードのデータをAPIで連携していて、
取引自体はどんどん会計ソフトに取り込まれていきます。
だから本来は、
そこまで時間がかかるはずの作業ではないのですが。
私は、止まっていました。
理由のひとつは、勘定科目です。
過去の帳簿を見ながら、
できるだけ同じ科目になるようにそろえて入力していました。
同じような支出でも、
年によって微妙に科目が違っていたりする。
でも、できるだけ整えたほうがいいのではないか。
そんなふうに思って、
一つ一つ確認しながら進めていました。
ある日、先生に進捗を聞かれました。
「いま、勘定科目を過去のものとそろえているところです」
そう答えると、先生はこう言いました。
「勘定科目は、帳簿のお化粧みたいなものだから」
やったら綺麗になるけど、
やらなくても、まあ何とかなる。
そんなニュアンスだったと思います。
その言葉を聞いたとき、
少し意外な気がしました。
私はずっと、
勘定科目は“正解があるもの”だと思っていたからです。
この支出は何費。
この取引はこの科目。
間違えたらいけないもの。
そういうものだと思っていました。
でも「お化粧」と言われると、
少し印象が変わります。
動画などで会計の話を聞いていると、
「美しい決算書」
「きれいな帳簿」
そんな表現をする人がいます。
数字の並んだ世界なのに、
“美しい”とか“きれい”とか。
最初に聞いたときは、
正直、あまりピンときませんでした。
帳簿は帳簿で、
数字は数字。
そこに美しさなんてあるのだろうか、と。
でも、先生の「お化粧」という言葉を聞いたとき、
もしかしたら、そういう感覚なのかもしれないと思いました。
整えれば整えるほど、
見やすくなる。
流れが分かりやすくなる。
そういう意味での“きれいさ”なのかもしれません。
とはいえ、今の私はまだ、
その感覚には遠いところにいます。
会計ソフトの画面を前にすると、
相変わらず迷うことばかりです。
この取引はどの科目にするのか。
自分の入力は本当に合っているのか。
考えているうちに、
手が止まってしまうことも多い。
それでも、ふと思いました。
帳簿を見て
「きれいだな」と思える日が、
いつか来るのだろうか、と。
今はまだ、
そんなふうに感じられる自信はありません。
でも、もし本当にそういう世界があるのなら。
少しだけ、見てみたい気もしています。


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