入所してしばらくして、いよいよ会計ソフトを触る日が来ました。
見たことのない画面。
専門用語ばかりのボタン。
「振替伝票」
「補助科目」
「法人地方税」
どこに何を入れるのか分からないまま、
先輩のパートさんに教えてもらった通りに操作します。
その場では理解したつもりでも、
一人になると途端に止まります。
……さっきの操作、どこでしたっけ。
復習しておくように言われた簿記3級は、
結局なんとなくしかできていません。
実務をやっていれば、
そのうち身につくのでは。
なんとかなる。
当時の私は、わりと本気でそう思っていました。
仕訳入力は、2回目も3回目も時間が短くなりません。
画面と資料を何度も見比べて、
「たぶんこれで合っている」と入力する。
わからないところを尋ねても
「ここをこうしておけばいいよ。PLみればわかるでしょ。」
???理屈がわかりません。
理解よりも、作業が先に進んでいく。
それでも日々は流れ、
次に任されたのが給与計算でした。
給与計算は、さらに厄介でした。
一度入力して、印刷して、確認する。
……数字が微妙に違う。
修正して、もう一度確認する。
今度は別の箇所が気になる。
見返しても、見返しても、
小さなズレが見つかる。
そのたびに、
これ、本当に合ってる?
と、自分に問いかける。
答えは出ません。
でも締切は近づいてくる。
だから、
たぶん大丈夫。
きっと合っている。
そう思うことにして、前へ進めました。
根拠はありません。
ただ、「止まれない」だけでした。
少しでも自信をつけようと、
夜に簿記のテキストを開くようになりました。
本当に、ほそぼそと。
ページをめくり、
仕訳の例題を見て、
ペンを持つ。
その瞬間、胸がぎゅっと締めつけられました。
あれ。
息が浅い。
数字を見ただけなのに、
心臓がどくどくと速くなる。
理解が追いついていないことが、
急に現実味を帯びました。
なんとかなる、と思っていた部分が、
一気に崩れた感覚でした。
会計ソフトで迷うことも、
給与計算が合わないことも、
全部つながっている。
そのことに、ようやく気づいたのかもしれません。
それまでは、
未経験だから仕方ない。
そのうち慣れる。
と、自分の中で完結させていました。
でも、体が拒否反応を示し始めたとき、
これは一人で抱えていい問題なのか、と考えました。
甘えているだけなのか。
それとも、何か根本的にずれているのか。
私は、同じ業界で働いてきた“先人”に
話を聞いてもらおうと思いました。
続けられるのかどうか。
その問いを、
初めて外に出そうとした瞬間でした。


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